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放射線授業

明けましておめでとうございます。探究推進課です。
今回は、昨年末12月19日(木)に高校1年生全員を対象に実施した「放射線授業」についてお伝えします。

放射線授業を始めた経緯

地上で生活する私たちは、宇宙線や岩石に含まれる放射性物質などから自然に放射線を浴びています。それ以外にも、放射線は、がんの診断や治療、農作物の品種改良に用いられるなど、私たちの生活に幅広く活用されています。

また、地球温暖化により脱炭素化が求められる中で、エネルギー資源の少ない日本においては、二酸化炭素を排出しないで大量の電力を確保できる原子力発電が再び注目されています。原子力発電は、放射性物質の核分裂反応によって放出されるエネルギーを活用するものですが、安全対策や放射性物質の処理などの課題があります。

2011年3月11日(金)に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う津波の影響で、福島第一原子力発電所事故が生じ、大量の放射性物質が外部に放出されました。それに伴う風評被害は、農家や漁業者などの生活に大きな影響を与え、現在も風評被害の払しょくに向けた官民挙げての取り組みが続いています。

このような現状を踏まえて、放射線に関する正しい知識を持ち、放射線を正しく恐れ行動することは、本校のスクールポリシー「岩手で、日本で、世界で活躍するリーダーの育成」のリーダーには必要な要素だと考えます。

そこで、昨年度より、高校1年生全員が放射線授業を受けるようにしました。放射線授業では、講義により放射線の基礎知識を理解するとともに、実習を通して目に見えない放射線がどのようなものか体験的に理解することができます。それにより、物理基礎の学習内容をより深く理解することにつながることが期待されます。

また今年度より、高校2年生理数科の最先端理数研修の内容を見直し、放射線授業で学習したことをさらに深めるプログラムにしました。今年度は、福島県双葉郡双葉町にある「東日本大震災・原子力災害伝承館」、茨城県那珂郡東海村にある「原子力科学館」、茨城県那珂市にある「那珂フュージョン科学技術研究所」を訪問し、実際の原子力災害の状況と人々に与えた影響について理解し、放射線と原子力を自分ごととして考えるとともに、未来に向けて取り組まれている最先端の量子研究について深く学習するものです。

なお本授業は、本校で企画し、一般財団法人日本原子力文化財団、日本原子力学会東北支部などのご協力で開催することができました。関係者の皆様、ありがとうございました。

目的

エネルギーや放射線にかかわる講義や実習を通して、その原理やメカニズム、危険性などを理解するとともに、科学的な視点でものごとを捉え、総合的に判断する力を身につける。あわせてデータのまとめ方や考察の過程など課題研究に必要な手法を学習する。

内容

Ⅰ 講義「放射線の基礎」 13 時 10 分~14 時(5階)いわいホール
Ⅱ 放射線実習      14 時 10 分~16 時(4階)中教室・大教室 

Ⅰ.講義

講義テーマ 「放射線の基礎」
講師 藤原 充啓 氏 (東北大学大学院工学研究科量子エネルギー工学専攻)【講義の概要】
(1) 放射線の人体への影響
 放射線の人体への影響、放射線の性質、放射線の単位、人体に放射線を浴 びると何が起こるか、急性の放射線影響、放射線と生活習慣によってがんになる相対リスク。
(2) 放射線防護の基礎知識ー無駄な被ばくを避けるには
 自然界の放射線(宇宙、大地、空気、食べ物から)、自然界から受けている放射線の量(日本は約2.1mSvの放射線を、自然界から受けている。)世界各国の大地からの年間平均自然放射線量(mSv)。身近な放射線利用の例。後半の実習に関連して、放射線防護の三原則ー焚き火と同じ?
1.距離が遠いほど、受ける放射線の量を少なく出来る。
 (できるだけ遠くに離れること!)
2. 時間が短いほど、受ける放射線の量を少なく出来る
 (できるだけ早くに離れること!)
3. 遮へい(しゃへい)するものの厚さが厚いほど、受ける放射線の量を
 少なくできる(建物の中などに入ること!)
 実際に原発事故が起こったときには、まずは「3.建物の中に入る」。それでも危険なら「2.なるべく短時間で」「1.遠くに逃げる」

【講義風景】

Ⅱ.放射線実習

 講師は、講義に引き続き、藤原 充啓 氏 (東北大学大学院工学研究科量子エネルギー工学専攻)、そして、今回は、実習補助として、事前研修を終えた6名の東北大学学部生・大学院生の皆様にご指導いただきながら、実習を行うことができました。
 簡易型放射線測定器(シンチレーションカウンター)「はかるくん」が一人1台貸与され、全員がそれぞれでデータを取り、表やグラフに値を落とし、得られた結果から考察を深めることができました。
【実習の内容】
1.自然放射線(バックグラウンド)の測定。
2.距離の逆2乗則
3.γ線の物質による吸収(材質による違い・厚さによる違い)

【実習風景】
【実習風景】
【ガンマ線の物質による吸収】

【生徒の感想】

  • 放射線は危険なものというイメージが高かったが、危険だけでなく人の生活に役立っていることが分かった。人体が放射線を浴びたときの影響を分かりやすく説明していただいたおかげで理解できた。また、放射線の防護について知らなかったが、三原則を知ることができて良かった。

  • 放射線は名前はよく聞くけど実際どのようなものなのか分かっていなかったので、知れて良かった。 特に、放射線はとても身近にあるということや医療以外にも利用されているということが印象に残った。

  • 今まであまり興味がなかったけど、たくさんの分野で活用されていて、さらに、勘違いしていた知識を新しく知ることができた。

  • 一人 1 台機械が使えて楽しかった。グループで数値を測ったとき、グループ内でも差があることが面白かった。

  • 最初の説明で何となく放射線について理解出来たし、その後の実験で大学生の方に楽しく、分かりやすく教えてもらい、(結果が)変になってしまったところはあったが、結果をまとめられたのでよかった。

  • 乗法公式の復習になった。

  • 実験をしたことで、物体によって放射線の通しやすさが違うことを実際に確認することが出来た。

  • 何となくで使っている単語が多いと思ったので、適切に知識をつけたい。

  • 放射線の内容がよくわからなかったところがあったり、計算の仕方がよくわからないときがあったので理系科目をがんばらないといけないと思った。

  • 今まで習ったさまざまな理科分野の知識を活用する力が必要だとわかった。

  • 実験結果からグラフにデータを移す力が足りなかった。

  • 様々な物事に対する理解が足りていないと感じた。印象で終わらせず、たくさんの情報を聞き、どういうものかを理解していきたい。

  • 放射線についての学習は、放射線に対する間違った認識を改められるのでこれからも続けた方が良 いと思う。