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【中3高1】中高合同課題研究 その2:人文科学研究はたくさんの文献に囲まれて

こんにちは!一関一高の探究推進課です。

先日スタートした「中高合同課題研究」。この日は2回目を迎えどんな調査・実験を行うかの検討がメインです。

今回の記事では、図書館で活動をしている人文科学の研究グループを紹介しようと思います。


01 人文科学の研究は、文献探しからはじまる

一関一高の図書館は立派です。グループで活動するのにちょうど良い大きなテーブルもあるので、1グループ1つのテーブルで研究を進めます。そして眺めも悪くない。

この日は辞書や文献を求め、図書館スタッフの方にも探すのを手伝ってもらいながら、手分けをして図書館をまわります。

一番探すのに時間がかかったのが『日本国語大辞典』。総勢8名で探しても『日本国語大辞典』が見つからない…。じっくり見ると本校の図書館には本当にいろいろな文献があります。「へぇ〜、この本もあるんだ」と感心しながらも、なかなか見つからず。そして…。

やっと見つけた『日本国語大辞典』全20巻(書庫にあった)!45万語を収録する研究に必須の辞典です。これは1972年刊行の初版。大学などには第二版が入っているはずですが、なんと今年から第三版の刊行に向けて、編集作業が動きだすそうです。

お目当ての本を見つけたら、研究の相談へ…。

現段階で聞こえてくるテーマは役割語掛詞の英訳の問題祭り言葉の意味など、これぞ人文科学な研究テーマです。

02 「さぁ、君たちは役割語の研究を頑張るのじゃ!」

こちらは役割語の研究グループです。みなさん「役割語」って知ってますか?「わしは〇〇じゃ」というセリフを聞いてどんな人を思い浮かべるでしょうか?きっとみなさん同じようなキャラクターを思い浮かべるはず。この「わし」や「〜じゃ」が役割語なんです。

上の写真の役割語の研究グループは、みんなで役割語の本の第一章を読み、何を対象に研究をするか考えています。役割語は「高校生がやると面白いかな?」と思って、高1のこれまでの高志探究で話してみたことがあるもの。興味もってくれる人たちが出てくれて嬉しいです。

「海外に行きたい!」という人もいるこのグループ。「海外に行くなら、海外でも人気の日本のことを話せないとね!」との理由で、ジブリ映画が対象になりそうです。セリフなどが特徴的なキャラクターをそれぞれが思い浮かべながら、ファンたちが書きおこした映画のセリフが載っているホームページ(そして探すと映画すべてのセリフが書きおこされている!)を見て、対象となる映画やキャラクターの候補を考えます。アニメだって、研究対象になるんです。

何を対象にしようか考える中で、「ところで役割語を研究する目的って何になるのかな?」との話も出ていました。そこは役割語の本に役割語を使ってどんな研究ができるかが解説されています。そのページをみんなで眺めて「なるほどー」。しっかりとした分析・調査ができそうです。

03 How do you translate Kakekotoba into English?

お次は、掛詞の英訳をテーマにしようか?と考えているグループ。高校1年生は「言語文化」の授業ですでに掛詞を勉強済み。授業で使う古典文法帳を持ってきて、まずは中学生にレクチャーです。英語が得意な生徒もいるので、この問題に取り組むのには申し分ないメンバーたち。英語訳や日本文学をやってみたいなあ、とグループで考える中で、「そういえば1つの音に2つの意味をかける掛詞を、英語ではどう翻訳しているのだろうか?」との疑問が出てきたそうです。それを聞いて、筆者も思わず「おもしろそう!」と一言。

「ちゃんと掛詞を説明してもらった?」と中学生に聞くと、「はい、大丈夫です」との返答が。国語担当の筆者はホッとしました。

英語訳の比較までできそうな『源氏物語』のテクストに検索をかけて、掛詞がはいった和歌をピックアップしていきます。

試しに生徒と一緒にやってみました。『源氏物語』本文で「秋」と検索すると158例出てきます。そして出てきた用例の中から和歌をピックアップしていきます。そのあと掛詞かどうかを確認して…。生徒は文法帳に載っている掛詞を打ち込みながら、「なんとかなりそう」と黙々と本文に向き合います。この地道な作業がきっと研究です。『源氏物語』の索引もあるのですが、さすがに高校の図書館にありませんでした。でも、こうした作業をちゃんとやっておくのは、この後とても役に立つはずです。

04 日本語の"むずかしさ"って何?

最後に紹介するのは、最初に『日本国語大辞典』を大捜索していたグループ。「日本語のむずかしさ」から何を調査するかがスタートしています。

「そもそも日本語って何がむずかしいの?」と逆に尋ねられ、「何だろう?」となったグループのメンバー。話は「日本語の濁音」や「月影」へ。古語では「月影」は「月の光」、他にも「影」は「面影」という言葉もあるよね、とさらに話題は「影」へ。ということで、いろんな辞書で「影」を調べます。

分厚い辞書を手分けしてめくっていきます。いっときはとても高い辞書のタワーができていました。メンバーが多いグループなので、手分けしてたくさんの辞書の記述をメモしていきます。

「"影"と"陰"の違いはなんですか?」と聞かれたのですが、これは「なんだと思う?」と質問でかえします(まず辞書を見よ)。言葉ってまさに、「むずかしい」です。

まだ、研究内容が決まったわけではありませんが、今後どこに落ち着くのか。研究の方法はいろいろあるので、また次の時間に頑張ってください。

05 この時間を振り返ってみると…

この時間の生徒の振り返りのコメントです。

▶人文科学の研究は、研究をしながらゴールが見つかっていく場合が多いことが分かった。
▶言葉にすることが難しかった。あと少しで何かがでてこないかんじがあった。

人文科学の研究してるなぁ、というコメントを抜粋してみました。研究には「生みの苦しみ」があると思います。人文科学ならそれはきっと「言葉」を生み出す苦しみでしょうか。研究したものが、人に伝わる言葉になっていってくれるといいな、と思います。

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